第一話
ナンノちゃんとの出会い。
NHKに歌謡スクランブルという番組がある。気だるい午後の一時から二時まで、いろんな音楽が流れる。まだ知らない曲を楽しむために、面白そうな特集の時は欠かさず聞いていた。
忘れもしない2019年10月2日。その衝撃は体を通り抜けていった。いきなりバロック音楽みたいなイントロからすでに何だこの大げさぶりはと身をのけぞるかと思えば、「好きよ好きよ」と始まる。何だこの曲は今までに聞いたことがない。寒空に吹かれながらイヤホンに耳を澄ました。
目に浮かぶのはお嬢様が恋焦がれている気分。あくまでものすごく上品でそして切なく盛り上がっていく曲調は私を感動させた。こんな曲を歌うのはいったいどんな人なの?
その思いでいっぱいになった。
曲が終わるともう夢中になった。誰だこの歌手は。ひとつ前の曲は松田聖子だからアイドルか?だとしたら誰なんだ?と案内を待った。
それが南野陽子、ナンノちゃんとの最初の出会いであった。